ボートレーサー養成所時代はリーグ戦勝率1位。デビュー後、初勝利までは65走を要したが、デビュー期勝率は同期でナンバーワンと、早くから高いポテンシャルを示した。
　デビュー後も着実にステップアップした。これまで8期を走り終えているが、勝率は右肩上がり。一度も前期を下回ったことはない。これはなかなか至難の業で、大きなつまずきがなかったことの証左と言える。そして、8期目にはついにA1級の勝率に到達。順調にこのポジションまで来たということだ。
　とはいえ、ここからが本番。2021年はさらにステージを上げられるかどうか、勝負の1年となる。持ち味は獰猛ともいえる攻撃性。1コース以外の決まり手を見ると、2020年は圧倒的にまくりが多かった。特に目立つのは4コースで、カドからの一撃が主武器である。これが強豪揃う先輩相手に通用するか、おおいに見ものだ。172cmという長身から繰り出す豪快なレースにぜひ刮目してほしい。

井上忠政は119期のエースと期待されデビューした。リーグ戦勝率は8.39。驚異的である。
養成所における近50期、25年間でこの8.39を上回った者はふたりしかいない。96期の新田雄史（8.48）と108期の江崎一雄(8.64)だ。あの瓜生正義でさえ8.31である。
勝ち切る勝負スタイルの根底には攻撃性があるのは言うまでもない。まくるべきところでは果断に行くのだ。迷いがない。いくら養成期間とて守勢に入っていては8点台を取ることはできない。
そうして鳴り物入りでプロデビューするが、周囲が注目しているとなれば意識過剰になってもおかしくない。…が、井上忠政は自然体で通してきた。フランクなのだ。そして、機転が利く。
これは、視野の広さや相手への思いやりと根っこが同じだろう。懐が深い人物である。
デビュー5年目、初のA1級入りを果たしたが、そのレースには幅が出始めている。混戦をさばき、抜き上げてくるシーンが増えたのだ。当然、視野の広さが根底にある。ますます今後が楽しみな逸材である。